脅威インテリジェンスとは?今知っておくべき3つの種類と活用メリット | |
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作成日時 25/07/15 (08:49) | View 28 |
サイバー攻撃は、もはや他人事ではありません。
ランサムウェアや標的型攻撃、サプライチェーン経由の侵入など、脅威は進化を続け、従来の対策だけでは限界があります。
「守る」「対応する」といった受け身の姿勢で、信頼や事業継続を守りきるには限りがあります。求められているのは、兆候を察知し、先回りで備えるセキュリティ戦略です。その中核を担うのが脅威インテリジェンスです。
自社にとって、今・何が・どれほど危険か、を見極める視点こそが、セキュリティ体制を根本から強化します。
本記事では、脅威インテリジェンスの基本から分類、活用法までを実務目線で解説します。
自社がどのようなサイバーリスクにさらされているか、具体的に想像できるでしょうか。
それを明らかにするのが、脅威インテリジェンスです。これは、単なる防御策やセキュリティ製品とは異なり、サイバー攻撃の兆候や背後にある意図を読み解くための戦略的な情報です。
端的に言えば、「何が起こりそうか」「誰が、どのように攻撃してくるのか」を予測し、行動の判断材料とするための知見です。警察が犯罪組織の動向を把握するために使う捜査情報にも似ており、単なるデータの羅列ではありません。
「この業界では現在ランサムウェアの被害が急増している」「このIPアドレスから不審なアクセスが多数発生している」といったように、意味づけされた情報として整理され、活用しやすい形で提供される点に価値があります。
たとえば、膨大なアクセスログの中から悪意ある接続パターンだけを抽出した情報、特定の攻撃者グループが用いるツールや手口の変化を追跡したレポートは、現場担当者にとって即戦力となります。また、ある国の情勢不安や国際的な制裁措置をきっかけに、特定の業界が標的となるといった地政学的リスクの把握は、経営判断にも直結する要素です。
こうした脅威インテリジェンスは、収集・分析・活用というサイクルを通じて常に更新され続けています。情報はリアルタイムに近い速度で循環し、日々変化する攻撃者の戦術や手法に対応する柔軟性を支えています。
サイバー攻撃は、もはや一部の企業や特定の業界だけの問題ではありません。現在では、規模や業種を問わず、あらゆる組織がリスクにさらされています。攻撃手法も年々進化し、従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれない状況が広がっています。
ウイルス対策ソフトやファイアウォールは既知のマルウェアには有効ですが、攻撃者はゼロデイ攻撃やサプライチェーン経由の侵入、AIによる自動化攻撃など、新たな手法を次々に生み出しています。もはや、守りだけでは限界があるのです。
必要なのは、「何が起きそうか」を把握し、「どう備えるか」をあらかじめ考えること。つまり、インテリジェンスに基づいた先回りの対応が不可欠です。
たとえば、同業他社が狙われたという情報を早期に得ていれば、自社も同様の攻撃に備えられるでしょう。脅威インテリジェンスは、未来のセキュリティ事故を未然に防ぐための重要な手段なのです。
ひとくちに脅威インテリジェンスと言っても、その内容は千差万別です。ここからは、それぞれの種類がどのような役割を持ち、どのように活用されているのかを順に見ていきましょう。
脅威インテリジェンスの中でも、もっとも即効性があり実務に直結するのが「タクティカル・インテリジェンス」です。
これは現場のセキュリティ担当者やSOC(Security Operation Center)のオペレーターが活用する、「今、何が危険か」を判断するための情報です。
たとえば、「このIPアドレスは危険」「このファイルはマルウェア感染している」といった、機械的に検知・遮断可能な情報が該当します。これらはIOC(Indicators of Compromise:侵害指標)と呼ばれ、不審なURLや異常なハッシュ値、悪用されたドメイン名などが含まれます。
重要なのは、タクティカル・インテリジェンスが使える形で提供されることです。ただの危険なIPの羅列では不十分であり、機械が読み取り、自動化できる形式が求められます。
また、攻撃者の手口は日々変化するため、情報も継続的な更新が不可欠です。外部ベンダーからのフィードや、自社内のログ分析を組み合わせ、最新の状態を保つ必要があります。
セキュリティ現場では、「危険なファイルを検知した」「怪しいアクセスを遮断した」といった事象だけでは十分とはいえません。重要なのは、「なぜ起きたのか」「次に狙われるのはどこか」といった攻撃者の意図や行動パターンを把握することであり、これを支えるのがオペレーショナル・インテリジェンスです。
このインテリジェンスは、攻撃の戦術や手法に注目し、攻撃者がどんな経路をたどり、どのようなツールを使って侵入してくるのかを明らかにします。たとえば、「初期侵入にフィッシングを使い、侵入後はPowerShellで権限昇格を試みる」といった一連の流れを分析することで、攻撃の全体像が見えてきます。
これらの情報は、分析を担うチームにとって、インシデント対応や原因特定の重要な材料となります。過去の事例と照合することで、攻撃者の目的や背景を読み解く手がかりにもなります。
サイバーセキュリティの最前線は現場にありますが、その背後で重要な意思決定を担っているのが経営層です。サイバーリスクは今や資金や人材の配分に直結する経営課題であり、その判断を支えるのがストラテジック・インテリジェンスです。
このインテリジェンスは、個別の攻撃ではなく、業界動向、国際情勢、法規制、地政学的リスクといった大局的な脅威を対象とします。たとえば、製造業への攻撃が増えている背景に産業スパイ活動の活発化がある、あるいは特定国の緊張が関連企業への攻撃を誘発する、といった分析が該当します。
これらの情報は、経営会議でのリスク評価やIT投資の方向性、サイバー保険の導入、新規事業のリスク判断などに活用されます。定量化しにくいリスクに対して、戦略的判断を下すうえでの指針となるのです。
重要なのは、こうしたインテリジェンスが、経営に資する意思決定支援であるという点です。
ここからは、脅威インテリジェンスによってどのようなメリットが得られるのかを、5つの観点から順に解説していきましょう。
サイバーセキュリティは、起きてから対処する時代ではありません。
いま必要なのは、起きる前に止めるという視点です。その実現を支えるのが脅威インテリジェンスです。
従来は、攻撃後に原因を調査し、被害の拡大を防ぐ「事後対応」が中心でした。しかし、攻撃の速度は年々加速しており、たとえばランサムウェアは数分で暗号化を完了させ、対応がわずかに遅れるだけで深刻な被害につながります。
脅威インテリジェンスは、こうしたリスクへの事前対応を可能にします。
たとえば、悪性IPやドメインなどのIOC(侵害指標)をネットワーク機器やEDRに反映させることで、攻撃を初期段階で遮断できます。また、攻撃者の行動パターンを把握すれば、「この形式のメールに注意」「この通信は即遮断」といった具体的な対策に落とし込むことも可能です。
サイバー攻撃を受けた際、企業にとって最も重要なのは、いかに早く、正確に対応できるかという点です。脅威インテリジェンスは、その初動対応の質を大きく左右します。背景情報があれば、迷わず的確な判断を下すことが可能になるためです。
インシデント発生時にまず求められるのは、状況把握です。
「攻撃の起点はどこか」「侵害された端末はどれか」「攻撃の意図は何か」といった情報を、短時間で明らかにする必要があります。しかし、ゼロから調査を始めると時間がかかり、その間に被害が拡大する恐れがあります。
脅威インテリジェンスがあれば、調査対象を迅速に絞り込めます。たとえば、「このIPは過去に標的型攻撃に使われた」「このハッシュ値は既知のマルウェアと一致する」といった情報をもとに、アラートに対して確信を持った判断が可能になります。
さらに、攻撃手法やグループ情報を参照することで、次の行動を予測し、端末隔離や通信遮断といった対応を優先順位づけして即座に実行することも可能です。
現代のセキュリティ現場では、アラートの質よりも量が課題となっています。1日数百件以上のアラートが発せられることも少なくなく、その多くが誤検知や重要度の低い通知です。限られた人員ではすべてを精査しきれず、重要なアラートの見落としにつながるリスクがあります。
この情報のノイズを解消する手段が、脅威インテリジェンスです。
既知の悪性IPや攻撃者の行動パターンと照合することで、意味のあるアラートを識別し、無視できるものを排除できます。結果として、担当者は本当に対応すべき脅威に集中できるようになります。
4.経営判断に役立つ戦略的情報が得られる
情報漏洩やシステム障害は、IT部門の範囲を超え、企業の信頼・売上・法的責任にまで影響を及ぼします。こうしたリスクに対し、経営層が的確な判断を下すためには、戦略的な脅威インテリジェンスが不可欠です。
たとえば、「現在、自社業界にどのような攻撃が集中しているのか」といった情報があれば、BCP(事業継続計画)の見直し、サイバー保険の検討、投資判断の材料として活用できます。これは技術ログでは把握できない経営レベルのインテリジェンスです。
また、国家による特定技術分野への攻撃動向を把握すれば、知的財産や研究開発部門の優先保護が可能になります。サプライチェーン上の脅威を早期に察知すれば、協力企業への監査や契約見直しといった対策も講じられるでしょう。
自社のセキュリティに自信があっても、外部からどう見えているかを知らなければ、知らぬ間に攻撃対象となっている可能性があります。
こうした外部視点でのリスク把握を可能にするのが、OSINT(Open Source Intelligence)です。
OSINTは、SNS投稿、掲示板、ダークウェブ上の会話、公開データベース、ニュース記事、リーク情報など、誰でもアクセス可能な情報を分析対象とする脅威インテリジェンスの一種です。
これにより、攻撃者の関心や、自社に関する不正情報の流通状況を把握できます。たとえば、ダークウェブで「自社のVPNアカウントが販売されている」といった情報を早期に検知すれば、被害拡大前に調査・対応が可能になります。これは信頼失墜の防止にもつながる先手の対応です。
また、OSINTはなりすまし対策にも有効です。
攻撃者が自社や社員名を悪用するケースが増えるなか、外部での名称使用状況を監視することは、詐欺メールの踏み台にされないための自衛策となります。
一般的に、脅威インテリジェンスは以下の6つのステップを経て形成されます。
1. 目的の設定:何を明らかにしたいのかを明確にすることで、以降の工程がぶれなくなります。たとえば、「新型マルウェアが自社に影響するか?」といった問いが起点になります。
2. 情報の収集:社内ログやアラート、OSINT、ベンダー提供の脅威情報など、幅広いソースからデータを集めます。SNSやダークウェブなど非公式チャネルも対象です。
3. 情報の整理:重複データの排除やラベリング、形式の統一を行い、分析に適した状態へと整えます。
4. 分析:単なる事実の確認にとどまらず、「どのような影響を及ぼすか」を読み解きます。
5. 伝達:インテリジェンスは適切な関係者に届けなければ価値を持ちません。セキュリティ部門、経営層向けに形式を変えて提供します。
6. 振り返り:得られた成果を評価し、次回の改善に活かすことで、継続的な質の向上が図れます。
このように、脅威インテリジェンスは目的設定から振り返りまでを1つのサイクルとして運用することが重要です。それにより、防御にとどまらず、先手を打つ体制が実現します。
サイバー攻撃の兆候は、必ずしも闇の空間に潜んでいるわけではありません。
攻撃者の痕跡や計画は、意外にも誰もが見られる場所に現れることが多く、こうした公開情報をもとにリスクを把握する手法がOSINTです。
たとえば、企業名がダークウェブで取引対象となっている、偽の従業員アカウントがSNSに出現している。こうした兆候をOSINTで早期に検知できれば、攻撃防止だけでなく、ブランド毀損や信用失墜の予防にもつながります。また、新たな攻撃グループの出現や特定の脆弱性への注目状況を把握することで、パッチ適用やシステム制限の優先度を戦略的に判断できます。
ただし、OSINTには虚偽情報や誤報の混在リスクもあります。得られた情報はそのまま鵜呑みにせず、複数ソースでの検証やファクトチェックが不可欠です。正確性と信頼性を見極める体制づくりが、OSINT活用の前提となります。
関連記事:OSINTの基本的な使い方
https://stealthmole.jp/blog/view/id/115#u
現代のセキュリティ対策で重要なのが、攻撃される前提で備えるだけでなく、兆候を察知し、未然に封じるという積極的な姿勢です。その中心にあるのが、脅威インテリジェンスです。
脅威インテリジェンスは、現場の対応力を高め、分析部門に洞察を与え、経営層の判断を支えます。企業のあらゆる層に、気づきと行動をもたらす仕組みです。
特に、ダークウェブ上での情報流通を監視し、自社名や従業員情報、取引先ドメインが悪用されていないかを確認することは、リスクを最も早く察知する手段のひとつです。
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